上海コーヒーと建築の旅
上海のフランス租界エリアには、誰にも真似できない独特の雰囲気がある。外灘のように派手でもなければ、陸家嘴のように鋭くもない。プラタナスの木陰に静かに隠れていて、中に足を踏み入れて初めて、短い一本の通りに半世紀分の物語が詰まっていることに気づくのだ。

私は武康路から歩き始めた。わずか2キロにも満たないこの通りには、様々な様式の歴史的建築物が数十棟も集中している。中でも最も有名なのは武康大楼だろう。交差点に横たわる三角形の「巨大な船」のようなこの建物は、赤レンガの外壁が午後の陽射しの中で温かな光を放っていた。コーヒーを片手に通りの向かい側に長い間立ち、光と影が建物のファサードをゆっくりと移り変わる様子を眺めていた。カメラを構えた観光客が絶え間なく行き交うが、不思議なことに誰一人騒ぐ者はいなかった。まるでこの建物の放つオーラに誰もが圧倒されているかのようだった。

武康路を南へ進むと、両側には高いフランスプラタナスが立ち並び、頭上で葉が交錯して緑のトンネルを形作っている。通り過ぎる洋館は一軒一軒に物語があった。巴金旧居、黄興旧居、ロミオのバルコニー……一般公開されているものもあれば、今も個人宅として使われているものもある。半開きの鉄扉の前を通りかかったとき、中庭に干された洗濯物と古い自転車がちらっと見えた。その瞬間、これこそが本当の上海だと感じた。歴史は博物館に閉じ込められたものではなく、日常と共に息づいているのだ。
午後は1933老場坊へと場所を移した。ここは武康路の優雅さとは全く別の世界だ。

この建物はもともと極東最大の屠畜場で、イギリス人建築家によって設計された。コンクリート構造は、冷たく無骨な産業美を放っている。最も圧倒されるのは内部の牛道である。かつて牛の群れを屠畜場へと追い立てるために使われたらせん状のスロープは、今ではクリエイティブパークの廊下となり、ギャラリー、デザインスタジオ、カフェが各所に点在している。
三階のカフェに腰を下ろし、ハンドドリップコーヒーを注文した。バリスタは眼鏡をかけた若者で、話を聞くと建築デザインを学んでいたらしく、この建物の「無梁楼蓋」構造に魅了されてここに店を構えたという。彼は天井の傘型の柱を指さしながら、この構造が当時世界初の試みだったと教えてくれた。
老場坊を出た頃にはすっかり夕方になっていた。振り返ってこの灰色のコンクリートの巨獣を見ると、夕陽がその稜線を金色に縁取っていた。上海に来る前は、この街は摩天楼ばかりだと思っていた。武康路と1933を歩いた後で初めてわかった。上海の最も魅力的なところはまさにこのコントラストにある。洗練された優雅さと無骨な産業の記憶が、一杯のコーヒーの時間の中で不思議なほど共存しているのだ。